電子契約のコラム
契約書類の保管期間は法令によって定められており、会社法では10年という長い保管が求められます。契約書類を取り交わすことが多い会社はもちろん、毎年、保管すべき契約書が増えていき、それを長い年月にわたって保管し続けなければならないため、保管スペースの確保も求められます。
安全かつ効率的に保管していくにはどうすればいいのか、保管スペースがなくお悩みの会社も一緒に考えていきましょう。
会社の事業活動を規制する法令は様々ありますが、その根本ともなるのが会社法です。会社法では、新規で取り交わした契約書だけでなく、契約期間の満期を迎えた契約書や、契約が解約された場合など契約が終了した契約書について、契約終了後10年の保管を義務付けています。これは取引の安全の観点から求められるものですが、取引相手の保護とともに、契約を取り交わした会社にとっても契約トラブルが起きた際に証拠として役立ちます。契約内容が適正であった、解約時に違約金などが発生することはあらかじめ同意していた、本人の署名と日付が書かれているなどを確認でき、後々トラブルが起きたときに役立ちます。
一方で、契約が終わってから10年も経過して過去の契約を持ち出してクレームをつけ、損害賠償などを起こすとなれば法的安定性が保たれないことから、10年経てば保管義務も強制されません。
会社法のほかにも、会社を経営していくうえで関わりの深い法律である商法や法人税法、消費税法などでも契約書の保管期間が定められています。これらの法律では、世界標準としての会計基準の運用や税務申告などの適正を保つ見地から、契約書をはじめ、決算書類や税務申告書類などを7年間保管するように義務付けています。
税務調査などが入ったときに保管がされていないと、適正な申告であったことを示す証拠が出せないばかりか、意図的に滅失させたのではと疑われかねません。証拠隠滅を図ろうとしたと思われれば、脱税の信ぴょう性が高まり、追徴課税といったリスクもあるので、適正な税務を行っていることを示すためにも7年間は保管が必要です。
会計や税務については慎重な会社も多いので、7年の保管義務は守っていても、うっかりすると会社法の規定を忘れてしまいかねません。会社法は会計、税務関連の法律より保管期間が長く、さらに契約の成立時ではなく、終了時から10年と最長期間が定められているので気をつけましょう。
契約書の保管は業種や会社の規模などにもよりますが、通常は本社で管理します。毎日大量の契約が挙がる保険会社や金額も高いマンション売買などの契約書も、各営業所や支社から毎日社内便で送られ、定期的に契約書をまとめて厳重管理のもとで本社へと送付されるのが一般的です。
いかに本社の規模が大きいと言っても、全国の営業所から送付されてくる契約書を長期にわたって保管し続けるのは、保管スペースを確保するだけでも大変なことで、必要になった際に探し出すのも大変です。そこで、今の時代はスキャナ保存制度を利用することもでき、一定の条件のもとで紙の契約書をスキャナで読み取り、電子保存することもできるようになりました。
もっとも、スキャナで1枚1枚読み取る手間はかかりますし、データが消失しないように安全にシステム化して管理する必要が生じます。
毎日、大量の契約を扱っている会社の中にはスキャニング専門の部署を設けている場合やアルバイトなどを増員して対処しているところも少なくありません。
一定の条件を満たす高画質でのスキャニング、改ざんのおそれがなく原本と同様であることを示すタイムスタンプの導入なども必須です。
高画質スキャナの導入やタイムスタンプ制度の導入、スキャニングするスタッフの増員など相応のコストも発生することになるでしょう。
この点、契約そのものを電子契約に切り替えてしまえば、そのまますぐに保管ができ、スキャニングの手間やスタッフの増員、高画質スキャナの導入コストなどはカットできます。
電子契約の導入にあたっては専用のシステムや電子署名の導入、取引の相手方の了承を得るなど一定の手間とコストがかかる点は否めません。しかし、紙の書類で契約を行った際の、スキャニング、保存、管理に加え、破棄する際には個人情報保護のため業者に溶解してもらい、マニフェストの発行を受ける、などという手間やコストはカットできるのがメリットです。
契約書は会社法では契約終了後10年の保管が義務付けられ、税務関係の法律でも7年の保管が求められます。スキャナ保存制度の創設により、スキャニングしての保管ができるようになり、保管スペースの省スペース化に役立つようになりましたが、それに伴う手間やコストが発生します。
紙の契約書とスキャニングの両輪を使うより、電子署名を導入して電子契約にすれば、紙の書類のカットに加え、スキャニングの手間やコストも省けて、安心かつ効率的に契約書の電子保管ができるようになります。