電子契約のコラム
契約書を作成する際には収入印紙の貼付が印紙税法上、義務付けられている場合があります。
もっとも、契約の種類や態様によって収入印紙の要否が異なるため、契約を結ぶにあたっては注意しなくてはなりません。
企業取引においては一定の業務を委託する契約が少なくありません。
業務委託をするうえで考えられる契約には2種類ありますが、それぞれ契約の特徴が異なり、収入印紙の要否も異なります。
請負契約は一定の仕事を依頼し、その完成や成果を求める契約です。
完成させたことに対して報酬が発生し、請負契約書は印紙税法上の2号課税文書として印紙の貼付が求められています。
委任契約は特定の法律行為を委任する契約であり、法律行為以外の業務を委託の場合には準委任契約と呼ばれ、委任契約と同等に扱われます。
委任契約は印紙税法上定められてない不課税文書となっており、契約書類への印紙貼付は不要です。
業務委託契約書に印紙が必要か否かは、契約の種類によって異なります。
印紙を貼付すべき文書は印紙税法に定めがあり、基本的には請負契約なら課税文書、委任契約であれば不課税文書となります。
印紙税法では20項目の課税文書を定めています。
20の文書は大きく4つのカテゴリに分けることが可能です。
第1号から第4号までと第17号に定められた階級定額税率の適用対象となる文書、第5号から第7号までに定められた高額の定額税率の適用対象となる文書、第8号から第16号までに定められた一般定額税率の適用対象となる文書、第18号から第20号までに定められた通帳と判取り帳が課税文書となります。
課税文書のうち、2号文書は請負に関する契約書についての定めです。
ただし、気をつけたいのは請負契約で記載金額がある場合は階級定額税率が適用される第2号文書になりますが、記載金額がない請負契約で継続的に行われるものは第7号文書に分類されることです。
7号文書は継続的取引の基本となる契約書を定めており、特約店契約書や代理店契約書、銀行取引約定書などをはじめ、特定の相手方との間で継続的に生ずる取引の契約書が該当します。
ただし、契約期間の記載のある場合に契約期間が3月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものは除外されます。
ここで、物品の加工請負契約を締結する場合について検討してみましょう。
一定期間に加工する総数量と総金額は確定しているとします。
そのうえで、契約書に納期は6ヶ月後とするという定めや、納品は各月50個ずつ10ヶ月間行うという定め、または代金の支払いは12ヶ月に分割して支払うという定めがあったとします。
この定めを見る限り、3ヶ月を超えて継続的に取引するので7号文書に該当しそうです。
ですが、こうした定め方は一つの取引ごとにおける納期や支払いの方法を分割したに過ぎないと解釈できます。
そのため、継続契約ではなく個別契約と判断できれば、第7号文書には該当しないことになるのです。
印紙税法で定められる20の項目に該当すれば課税文書、あたらなければ不課税文書となるほか、課税文書の中でも印紙税法で除外規定があれば、非課税文書となります。
20項目の課税文書に該当する文書でも、以下にあたる文書では印紙税は非課税です。
一つ目として課税物件表の非課税物件欄に規定する文書、2つ目として国や地方公共団体または一定の非課税法人が作成する文書、3つ目として印紙税法の別表第3の上欄に掲げられた文書に該当し、同表の下欄に掲げる者が作成する文書、4つ目として印紙税法以外の特別の法律により非課税とされている文書が挙げられます。
印紙税の課税文書は印紙税法により、課税物件表の物件名欄に掲げられています。
そのため、課税物件表の物件名欄に掲げられていない文書は印紙税の課税対象にはならず、不課税文書となります。
たとえば、物品の売買契約の場合、継続する売買契約として第7号文書になるものを除いて不課税文書です。
7号の継続する売買契約と2号の請負契約かの判断基準も難しいのですが、契約当事者の意思が仕事の完成と、物の所有権移転のいずれに重点が置かれているかで判断をすることになります。
仕事の完成が目的なら2号課税文書、所有権の移転が目的なら売買契約となり、継続契約なら7号課税文書、そうでない場合には不課税文書ということになるので、契約の目的や形態をいかに判断するかはとても重要です。
契約内容の判断基準はとても難しいため、印紙税法基本通達別表第一第2号文書の2というのを発して、請負契約と売買契約の判断基準をわかりやすく定めているので参照してみましょう。
では、本来は課税文書にあたり、印紙の貼付が必要であったのに判断を誤って納付しなかったり、わかっていながら添付しなかったりした場合はどうなるのでしょうか。
課税文書の作成者が課税文書の作成のときまでに納付すべき印紙税を納付しなかった場合、納付すべき印紙税の額とその2倍に相当する金額、すなわち本来納付すべき額の3倍の過怠税が課されます。
また、貼り付けた印紙を定められた方法で消印しなかった場合には、消印しなかった印紙の額面金額に相当する過怠税が課されるので注意しなくてはなりません。
なお、課税文書の作成者が所轄税務署長に対して、印紙税を納付していないことを自ら申し出た場合には本来の印紙税額とその10%相当額、つまり1.1倍の過怠税で済みます。
ただし、その申し出は印紙税についての調査があったことで3倍の過怠税が課されると予知して行われたものでないことが求められます。
つまり、もし印紙税を添付し忘れたことに気づいた場合には、調査が入る前にすぐに納付をするようにしましょう。
一方、納付が遅れれば少なくとも1.1倍、調査が入れば3倍もの金額を納付しなくてはならなくなるので、意図的に納付をしないという選択はしないようにしましょう。
契約書の種類や態様に応じて収入印紙の要否が異なり、もし納付をしなければ過怠税のリスクもあります。
契約の種類ごとに収入印紙の要否を判断するのが面倒に感じるなら、電子署名と電子契約を導入するとスムーズです。
電子契約なら契約の種類を問わず収入印紙は不要となるので、契約業務の効率化が図れます。