電子契約のコラム
平成27、28年度に、電子帳簿保存法の要件が緩和されました。それまではスキャニングしたデータのみが認められていましたが、それに加えてスマートフォンや、デジタルカメラで撮影した電子データでの保存も認められるようになりました。こうした電磁的保存の認可により、日本も本格的なペーパーレス化が促進されつつあります。多くの企業が、すでに電子帳簿保存法への対応にすでに踏み切っています。この記事では、電子帳簿保存法についてのポイントをまとめています。
電子帳簿保存法とは、原本保存義務のある契約書や領収書などを、電磁的記録で保存することを認める法律です。各書面の中には7年間の原本保存義務を持つものがありますが、原本の代わりに画像データで保存することで保管コストを大幅に削減する狙いがあります。
時代の変化や機器の進化などにより、電子帳簿保存法は何度も改正の経緯を辿っています。初めてスキャンによる電子保存が可能となったe-文書法が施行されたのが平成17年度です。当時は様々な制約付きでしたが、平成27年度の税制改正では3万円未満という金額の上限も撤廃され、電子署名も不要とされました。これが平成28年度の税制改正で、スキャナ以外にスマートフォンやデジタルカメラでの撮影画像の保存が認められ、大幅にデータ化を促進するキッカケとなりました。
それでは、書面を電子化するときの具体的な方法と特徴についてまとめてみましょう。
法律によると電磁的記録というのは、電子的磁気的、その他の人が認識できない方式も含め、電子計算機による情報処理の用に供されるものとされています。国税庁のサイトによると帳簿書類の保存方法は、「サーバ・DVD・CD等などに記録した電磁的記録(電子データ)のままで保存することができます。」と明記されています。開始3か月前までに税務署に申請して承認を取らなければいけませんが、パソコンで帳簿書類を作って保存するだけで正式保管になりますので、非常に手間が省けます。
帳簿書類は原則紙保管であることは変わりませんが、6年目以降(一定の書類については4年目以降)は、一定の要件を満たすマイクロフィルムで保存することもできます。一定の基準を満たすマイクロフィルムリーダ又はマイクロフィルムリーダプリンタを設置する必要があり、保存期間が3年を経過するまで記録事項の検索ができる機能も必要です。
マイクロフィルムというのは写真フィルムのことで、出版社や新聞社、設計図面や絵画などの紙を永続的に記録保存するために使われるのが一般的です。非常に寿命が長く、CDやDVDは10~30年でデータが消えると言われていますが、100~500年に及んで記録を残せると言われている技術です。他にも改ざんが非常に困難なことで有名で、信頼性があつく重要情報の保存にはとても優れています。ただし、フィルム化にも現像にも非常にコストがかかるので、あまり一般的ではありません。
誰もが一番想像しやすいのが、スキャナを利用した保存でしょう。電磁的保存は一貫してパソコンで作成したものに限られるので、手書きの帳簿などはデータ保存できません。紙をスキャンして電子データにするのがスキャナで、平成17年の電子帳簿保存法の改正で初めて導入されたのがこの方法です。
当時は契約書や領収書で3万円未満のものに限定されていましたし、原稿台と一体化しているスキャナでしか読み取りは認められませんでした。現在は、金額上限も撤廃され、署名も不要、かつスマートフォンなどでの撮影データも認められるようになったわけです。
電子帳簿保存法の中にスキャナ保存制度があるのであって、双方の位置付けは同じではないので注意しましょう。平成28年度に認められたスマートフォンなどによる撮影は、スキャナ保存制度の中で、スキャナ以外の機器も新たに認められたと解釈すれば良いでしょう。国税関係帳簿書類の保存方法については実は細かい種別があり、現在でも原則はすべて紙保存とされていることは認識が必要です。それぞれをまとめてみましょう。
1.帳簿(総勘定元帳、現金出納帳、売掛金・買掛金台帳など)
2.決算関係書類(棚卸表、貸借対照表、損益計算書、計算・整理または決算に関して作成されたその他の書類)
3.書類(契約書、領収書、請求書、納品書、注文書など)
なお、1と2は電子データ保存は認められていますが、スキャナ保存は認められていません。3に関してのみ、電子データでもスキャナでも保存が認められています。少しややこしいですが、たとえば棚卸表をプリントしたものをデジカメで撮影しても、その写真データは認められないことになります。
電子保存を開始する場合、開始3か月前までに税務署に申請し、承認を得る必要があります。申請方法は、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を作成し、所轄の税務署長宛に提出します。スキャナ保存の場合は、「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」を作成し、所轄の税務署長宛に提出する必要があります。
双方は異なりますので注意しましょう。なお、改正前に申請書を提出していた場合は、新しい制度に切り替える際、再度申請書の提出が必要になります。以前に受けた承認は、あくまでもその時の内容に限られますので、申請なしに手法を変えることはできません。
電子帳簿保存法はコスト削減メリットが非常に大きく、中小企業においても切り替えがどんどん進んでいます。ただし、導入時には多少のハードルもありますので、きちんと理解してから電子契約化をすすめましょう。