電子契約のコラム
企業が経費削減を考える上で、真っ先に槍玉に上がりがちなのが人件費です。
オートメーション化を図る、人数を減らす分、少ない人数で業務負担を増やす、正社員を切って非正規社員を増やすなど、人件費をカットする手段は様々と考えられます。
ですが、人材不足が問題となっている時代に、単純な人件費カットが本当に企業経営の安定化や持続的な成長につながるのか、よく考えておきたいものです。
人件費を減らす方法としては人数を減らす方法のほか、人数は維持したまま、給与や手当などを減らす、ボーナスをカットするといった方法もあります。
正社員を解雇するのは法律上も難しい課題があるため、まずは給与面のカットから検討する企業が多くなっています。
基本給は各従業員に毎月必ず払う必要がある部分ですので、基本給を減らすことは固定費の削減に大きな効果があります。
サービス業など人手がないと困る業態など、人数は減らしたくないけれど、人件費はカットしたいといった企業に選ばれている方法です。
もっとも、従業員の同意は得られにくく、中には家族の生活が難しくなったり、住宅ローンの返済が難しくなったりするケースも出てきます。
そのため、人数は確保したいのに転職を決断して離職者が増えるリスクがあります。
また、基本給は新卒採用でもベースとなる給与です。
他の企業と簡単に比較されてしまうため、今後の成長のために新卒は何人か採用しておきたいと思っても、全く応募がないといった事態も起こりかねません。
ボーナスは基本的に業績に連動して支払う性質のものですので、業績の悪化などを理由にカットするのは比較的しやすいものです。
もっとも、従業員の多くはボーナスが何か月分というのを見込んで入社している方も多く、あまり長期にボーナスカットが続けば離職を検討する方が増えてきます。
また、同業他社が普通のボーナスを払っているのに、自社だけ業績悪化を理由に支払わないとなると、企業への不信や不安が募って人材流出が進む虞もあるでしょう。
各種手当は比較的カットがしやすく、従業員の賛同も基本給などに比べれば得やすい部分ではあります。
住宅手当など実家暮らしの方と賃貸暮らしや持ち家で支給の可否が異なり、不公平感があったものや、役職手当や資格手当など立場や資格によって差がついてしまうものはその支給対象になっていなかった方にとっては不平等感から解放されるからです。
もっとも、資格手当を得ることを目標にスキルアップに励んでいる従業員などもおり、モチベーションの低下やスキルダウンにつながるリスクもあります。
手当を減らしたいときには全てを切るのではなく、優先順位を検討し、必要性の低い手当や従業員への影響が少ないものからカットしていきましょう。
リストラは最終的な手段です。
特に正社員は正当な事由なく解雇できないことが法令上定められており、よほどの経営悪化などの深刻な事態が求められます。
自主退職を促すべく、早期退職を募る場合には退職金を払うための財源がなくてはなりません。
また、離職されたくない人材が早期退職を希望するリスクもあるので注意が必要です。
基本給のカットやボーナスの不支給、手当のカットなどで人件費をカットできた場合、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
給与のカットは全従業員への効果があるので、毎月の固定費の圧縮ができ、年間あたりにすれば大きなコストカットにつながります。
給与の額に応じて社会保険料なども負担していますから、社会保険料の費用も同時にカットできるのもメリットです。
リストラの対象を給与の高い中高年や、業務ができない生産性の低い従業員にすることでコストカットのメリットと業務効率の向上が期待できます。
人件費の削減は目先のコスト負担軽減には役立ちますが、中長期的に見るとデメリットが大きくなるので、慎重な検討が必要です。
どのようなデメリットがあるのか、しっかり確認して臨みましょう。
人数が減っても業務内容が変わらなければ、従業員一人あたりの負荷や負担が増大し、かえって残業代が増えたり、体調を崩して休職や離職をする人が増えたりします。
リストラによって生産性が低い人材を切ったとしても、リストラしなければならない会社の状況に不安を感じて、有能な人材まで辞めてしまう可能性があります。
また、早期退職を募った場合には有能な人材から流出するリスクが少なくありません。
リストラを実行すると、会社の規模を問わずニュースで取り上げられるほか、取引先などにすぐに知れわたります。
会社のイメージや信頼、評判が下がり、その後に人材を採用したくても応募者がいなくなるリスクもあるでしょう。
リストラしやすいのは派遣社員やアルバイトなどの非正規社員ですが、大規模な派遣切りなどを行うと社会的な批判を浴びることがあります。
取引先などから経営が危ないなどと取引を停止されるリスクもあるので注意しましょう。
人は切らない、でも給与は減らすとなれば、従業員のモチベーションが低下するほか、中には住宅ローンが払えない、家族が養えないと他の企業へ転職する人も出てきます。
有能な人材ほど他の企業からも引く手あまたで、転職機会もあるため、企業にとって必要な人材が流出し、能力の低い従業員ばかりが残るといった事態になりかねません。
少子化で人材不足が叫ばれている日本で、リストラの断行や離職者を増やすような給与などのカットはリスクが大きいです。
人件費においては影響度の少ないところから見直しを検討するようにするほか、人件費以外の部分で無駄な経費をカットできないか、慎重に検討しましょう。