電子契約のコラム
国土交通省が2018年、公共工事や建設コンサルタント業務に電子契約システムの試行運用を始めることがニュースとなりました。この流れは他府省でも進められる予定であり、本格運用は2019年夏の予定です。国を挙げて契約締結は紙ベースから電子データへ移行が進んでおり、現行の印紙税法上、契約書の印紙税ももはや不要のものとなる見込みです。
何より契約の確定や変更にかかる時間が短くなり、業務がスピーディになる点は大きいでしょう。政府のこうした流れを鑑みても、契約業務の電子化が企業にとって大きな利益に繋がることは十二分に理解できます。今後急速に普及が見込まれるシステムの導入を、本格的に検討するタイミングが来ていると言えるでしょう。
契約書の交付と言えば紙ベースでしたが、紙に代わり電子データに電子証明書で電子署名する方法が電子契約です。当然のことながら書面による契約と同等の証拠力が認められる必要がありますが、その効力を発揮するのがクラウドスタンプのタイムスタンプです。契約の内容を証拠として残すため、クラウドスタンプでは電子書類にタイムスタンプという電子署名を付与します。
押印と言えば印鑑というのが従来の手段ですが、これを電子署名として、従来の押印の契約と同様の証拠力を付与するのがクラウドスタンプによる契約です。クラウドスタンプの場合、タイムスタンプが付与されて以降、改ざんされていないことを証明することができる検証サービスまで用意されているため、書類の証拠力を担保しているのが特徴です。当然ながらデジタル文書ならなんでも良いわけではなく、安心して締結できるのは、こうした技術とサービスがしっかり整っているからに他なりません。
紙ベースと比較すると、形式はPDFとなり、印鑑は電子署名に、送付方法は郵送からメールへと変わり、保管は倉庫からクラウドへと変わります。タイムスタンプのような信頼の技術があって初めて、こうしたコスト削減が実現すると言えるでしょう。
電子文書で契約を取り交わす場合、課税対象とならないケースが多いため、印紙税の削減も実現することができます。そもそも印紙税の対象は書面の文書のみですが、その根拠は印紙税法にあります。印紙税法第2条では20項目が印紙税の対象文書として記されていますが、指しているのは書面の文書のみで電子文書は含まれていません。
国税庁の見解としても、電磁的記録は注文請書の現物を交付したとは言えないため、課税文書を作成したことにはならず、印紙税の課税原因は発生しないと明記されています。冒頭でも触れた通り、政府も2003年頃から契約の電子化にはかなり積極的で、2005年には当時の首相である小泉元首相が国会の答弁で、文書課税である印紙税は電磁的記録により作成されたものについて課税されないと明言されました。
永らく契約の都度印紙税を納めてきたわけですから不安に感じるのも当然ですが、税金がかからないことは公にされている事実ですから、むしろ積極に節税に乗り出すべきではないでしょうか。
紙の書類を電子化するだけでカットできるコストは山のようにあります。契約書の郵送代、封筒代、印刷代、書類保管費など、あらゆる事務コストを削減できるのが電子化の大きなメリットと言えます。印刷して製本した書面を複数持ってお互いの事務所を行き来し、印鑑や割り印を押して双方長期保管する、そんなやり取りが前時代的なものになりつつあります。
今現在、ただ単に契約書がしまってある倉庫やキャビネットの一切を、もし丸々なくすことができたとしたら、会社がどれだけの恩恵を得るかを想像してみてください。
契約書は、締結した後にも更新や覚書の付加、内容の変更などで急に内容を確認しなければならないケースが発生します。そのような時に、倉庫やキャビネットの中から目当ての書類がすんなり出てくる企業は、実はそう多くありません。ほとんどの場合、契約書を探し出すのに数時間、もしくは古いものなら数日を要する場合すらあります。
書類の電子化は、こうした無駄な労力をなくし、スピーディな対処ができることも大きな魅力と言えるでしょう。また、契約書を取り交わす時間自体も大幅に短縮できます。まず双方が時間を合わせて事務所に出向く必要すらなく、すべてインターネット経由で行うことが可能です。特にクラウドスタンプなら、送信者が書類を作成、送信した段階で電子署名が付与され、受信者が書類の内容に同意する操作を行えば、同意の記録として電子署名が付与されます。
紙ベースの契約書と異なり、データであれば紛失や破損のリスクが大きく軽減されます。
たとえば人的ミスでなくても、自然災害や火災など不可抗力の事故による紛失は起こり得ますが、クラウド上へ保管することでこうしたリスクを回避することができます。もちろんセキュアなクラウドでなければいけませんが、信頼のおけるサービスを利用すれば、これほど確かな保管方法はないでしょう。企業コンプライアンスも向上し、取引先からの信頼も得られることは間違いありません。
電子契約には様々なメリットがあります。政府が積極的に紙ベースからデジタルベースへと移行を進めているように、あらゆる角度から考えても、この流れは加速すると確信されます。企業として、今ある諸問題や将来的に予測される課題をクリアするために、そろそろ本格的なシステム導入を検討する時期にきていることは確かでしょう。ぜひこの時に、自社の契約書関連業務の在り方を考えてみてはいかがでしょうか。