電子契約のコラム
書類には収入印紙を貼らなければならないものがあります。購入する代金は税金となりますので、貼らないと税金を納めなかったことになりペナルティを科されることになります。ただし、近年政府も推進している電子契約を採用すると、この税金を節税することができるようになりました。今後事業を進めて行く中でぜひ押さえておきたい知識ですので、詳しく解説します。
法律で定める課税文書を作成した際には、税法により所定の税金を納めなくてはなりません。請負契約書も該当書類とされ、購入した証書を貼付して消印することで納付とみなされます。請負契約書の税額は、契約金額によって以下のように決められています。
目的は国が租税や行政に対する手数料を徴収するためで、税法ができたのは1899年のことです。その後1967年に全面改正されましたが、税収としては年間1兆700億円を超える重要な国の財源の1つなので、廃止が叫ばれつつもなかなか踏み切れないというのが実情でした。分類としては財産や権利などの取得や移転に対して課せられる流通税の一種で、同じものには自動車の重量税や不動産取得税などがあります。ただし、他と異なるのは流通取引そのものではなく作成される「文書」を対象としている点で、このことが電子化による節税を実現することとなったのです。
前述の通り文書を対象とした税金である以上、文書ではなくデータ上での契約締結となる電子契約は課税対象とはなりません。このことは国税庁のホームページでも解説されていますし、2005年の国会での答弁で、当時内閣総理大臣だった小泉元総理も課税対象とはならないことを明快に説明されています。
なお答弁では、必要に応じて検討して参りたいと締めていますので、将来的に新たな税法が生まれないとも限りませんが、現在のところそうした動きはありません。現在の税法第2節第2条に言う「課税文書」を対象とする税金であるとの一致した見解ですので、データでの契約にはなんら納税義務は発生しないことになります。
国土交通省も2018年度から運用する公共工事のシステムでは契約を電子に切り替えており、受発注者が交わす単価合意書も電子化することを決定しています。これにより公共工事業者は単価合意書に必要だった印紙税を負担する必要がなくなりました。
国土交通省に限らず、農林水産省、防衛省、内閣府の4府省でも同様の電子化が進められていますので、今後紙で行っている契約締結や契約変更、検査、支払い請求などはすべて電子データ化される見込みです。受注者が発注機関に出向く必要もないため事務手続きがスピーディになり、業務の向上も期待されます。
電子化するだけで公に節税になる電子契約。しかし対応できる企業ばかりとは限りません。たとえば自社で契約の電子化を取り入れたとしても、肝心の取引先がまったく応じる気配もないような場合には、結局個別に紙ベースでの契約を取り交わすことになります。電子化の義務があるわけではありませんので、現時点ですべての契約における印紙代が節税できる対象にはならないことも考えられます。
実際に電子化に踏み切ることでコストメリットを実現した企業の事例をご紹介します。
ビル清掃は、業務委託契約書で締結するのが一般的です。一度締結した後も清掃範囲の変更などがあった場合は、その都度契約を締結しなおす必要があります。またクライアントだけでなく、フランチャイズ展開の際にも当然契約書を作成する必要があります。紙ベースの契約では莫大な手間と税金がかかっていたものが、電子化することで大幅なコスト削減となり、契約変更もスピーディになりました。クラウドスタンプを導入した事例では、1通800円かかっていた税金が0円となり、契約書保管のためのスペースもコスト負担0円となりました。
ソフトウェア業界はピラミッド構成のため、下請け・孫請け・更にその下まで請負業者がおり、多大な契約コストがかかっています。しかも継続的な業務委託だけでなくスポット的な請負も多いため、その都度大量の書類を作成し、税金が発生していました。クラウドスタンプ導入によりこれらのコストが一切なくなり、締結も非常にスピーディになりました。通常1通200円~6万円もかかっていた税金が0円となり、契約書を製作する作業にかかる人件費も大幅にカットすることに成功しています。
電子契約を導入することは、税金対策のみならず、業務の効率化にも大きなメリットがあります。企業利益を追求するには、まず無駄をなくすことが重要ですから、ぜひシステムの導入を検討してはいかがでしょうか。