電子契約のコラム
環境対策や管理の適正化やスムーズ化の側面から、ペーパーレス化に取り組む企業も増えています。契約書や領収書などの書類も電子化をしていくことで、紙代や印刷代、郵送代や保管費用などのコスト削減ができるのもメリットです。
もっとも、企業にとってのメリットはそれだけではありません。ペーパーレス化のための環境整備に手間やコストがかかると躊躇している企業にとっても、知っておきたいペーパーレス化のメリットについてご紹介します。
ペーパーレス化を推進する企業の目的の一つとして、木材から作られる紙資源の削減による環境対策や、各種コストの削減が大きく取り上げられがちです。ですが、環境対策やコスト削減効果にとどまらず、管理・運用における手間の大幅な削減や検索性の向上などによる業務の効率化やスピードアップ、災害時などのリスク管理など様々なメリットがあります。
目先のコスト削減や環境に貢献している企業としてのアピールにとどまらず、企業経営にとって有利となるメリットがたくさんありますから、そうした点も目的に掲げてペーパーレスの導入を検討することで、より実りある環境整備ができることでしょう。
企業がペーパーレス化を実現していくうえでは、電子契約やデータベース化にどんなメリットがあるかをよく理解し、それらを目的に掲げたうえで、社内外の同意を形成しなければなりません。運用をしていく社内のスタッフをはじめ、電子契約や領収書などの電子化に関わることになる取引先などの社外の理解も求められるためです。そうした労力を割いても導入するメリットがあることを、以下で確認していきましょう。
紙ベースでの運用の場合、紙を購入するコストをはじめ、印刷コスト、契約書類へ添付する印紙代や請求書の発行や領収書の発送に伴う郵送代もかかってきます。また、法律上、税務関係書類は7年、契約書類は会社法では契約終了後も10年といった長期保管が義務付けられているため、保管の手間やコストも発生します。
本社で保管するために契約書類を郵送するコスト、本社のスペースがいっぱいになって倉庫を借りる場合や書庫などを整備するコストもばかになりません。長期にわたって適正に保管し、必要に応じてすぐに探し出せるようにインデックス付けするなど業務負担もかかり、そのために専任部門を設け、人材を雇うとなれば人件費もかかります。電子契約の導入により、ペーパーレス化が実現できれば、こうしたコストをカットできるとともに、データベースによって管理や検索もスムーズにできるメリットが期待できます。
契約を電子化し、その他の電子保存が認められる書類についても電子保存によりデータベース化が図れれば、必要なときに必要な書類をすぐに確認できるようになります。また、紙の書類を分類してファイリングする、倉庫や書庫などに足を運んで、大量の棚の中から必要な書類を探し出すといった手間も省け、時間も労力もカットで業務の効率化にも繋がります。情報流出や悪用を防ぐため、データベースへのアクセス権限を設定することは不可欠ですが、セキュリティ体制を構築することで、本社はもちろん、支社や営業所、必要に応じて出張先や外出先などからも検索や閲覧が可能となり、業務のスピード化が図れるのもメリットです。
紙ベースで書類を保管する場合、書庫にカギを設定したとしても、カギを勝手に解錠されて持ち出されたり、焼却されたり、悪用されるリスクもあります。また、会社の業務時間中は専属のスタッフが受付をすることを条件に書庫に入れるといった会社もありますが、Aという書類を探しに来たと申請しながら、勝手にBという書類を持ち出すことや改ざんして戻すといったリスクも少なからずあります。
電子契約化とデータベース化を図ると、権限を与えられた者のみが閲覧ができ、IDの管理で誰がいつ閲覧したかも分かるとともに、タイムスタンプなどの運用により、あとからの改ざんリスクや持ち出しや隠滅リスクも回避できるのがメリットです。
紙の書類をオフィスの一角や本社の書庫などで一元管理する場合、万が一の火災や地震、水害などの災害発生時に滅失のおそれがあります。他の営業所で事業が運営できたとしても、必要な書類を失ってしまうことや一時的にでも閲覧や確認ができなくなることで、災害被害が発生していない場所でも業務運営が困難になるリスクがあるのです。
データとして保管し、データのバックアップやサーバーを別の場所で管理するなどすることで、一つの書類について分散管理が可能となります。紙ベースでは一つの場所でしか管理できなかったものが、データ化で復元的な管理を可能にするため、企業の事業継続に役立ちます。
ペーパーレス化や電子契約化においては、契約の相手方や領収書の受取相手となる取引先や顧客の了承も得る必要があります。もっとも、今の時代はペーパーレス化で紙の材料となる森林資源を守ることができる、カーボンオフセットに繋がることをアピールすれば、社外の理解や協力も得やすくなるでしょう。ペーパーレス化に取り組み環境保護に貢献している企業としてアピールもでき、既存顧客だけでなく、社会的な評価も受けやすくなります。これによって顧客の増大や売上アップ、株式購入者の増大や融資や助成が受けやすくなるなど、収益アップや資金調達でも有利に働くメリットがあるのです。
ペーパーレス化にあたって気を付けたいのは、電子化が認められない書類がある場合や一定の条件を満たさないと適正な保管文書として認められないケースがあることです。そのため、法律や制度の仕組みをよく理解し、マニュアルの整備などを含め、社内にルールを徹底させる必要があります。
電子契約にあたっては取引の相手方にも理解を得なくてはなりません。また、電子署名の導入やシステムやサーバーの整備や、社内申請フローなどオペレーション変更のコストもかかります。スムーズな導入の仕方として負担が少ないスモールスタートか、もしくは、トップダウン方式で一気に業務改革を推し進めるなどが求められるでしょう。
企業のペーパーレス化はコスト削減だけではなく、業務の効率化や生産性向上、セキュリティ向上や災害時の業務継続、環境に優しい企業としてのアピールなど様々な目的とメリットがあります。導入にあたっての混乱を避けるよう、メリットをよく理解したうえで、自社に合わせた導入の仕方を検討しましょう。